紀宝町布引の滝

もし「幻の滝」というものがあるとするならば、私にとっての「幻の滝」はこの滝です。心霊現象とか不思議な体験なと信じなかった私が、初めて味わった体験です。

ある年の一月、三重県白山町の布引の滝に行きました。すこし雪が残っていたために、なかなか先に進めず、道に迷い、崖から落ちそうになり、怖くなり引き返しました。そんなことがあり・・一週間経ちました。そして次の土曜日の晩、夢をみました。ちょうど先日の白山町の布引の滝から引き返したところの続きでした。すこし引き返したところで川の反対側に渡る橋を見つけました。そこで反対側から回り込み、藪の中を進み、しばらくしてかすかな音がしたので上を見上げたら、山の上から、蜘蛛の糸をたらしたような滝が現れました。へぇ・・珍しいな・・こんな滝見たこと無いなあと・・夢の中で独り言を言っていたようです。そして目が覚めました。

普段は、あまり夢のことを覚えていないのですが、そのときは朝になってもしっかり覚えていました。そして次の日、朝早く赤目を出発し、もう一度白山町の布引の滝に行こうとしたのですが、なぜか早起きし過ぎ(3:00)たし、元気もあったし、道路で曲がるところをまっすぐ行ってしまったし・・ということが重なり、そのまま高速に乗って南紀方面に行くことにしました。夜が明けたころ、三重県の一番南の端、紀宝町につきました。そこには有名な「飛雪の滝」があったので、まずそこに行こうとしたのですが、地図を見たら山の上に「布引の滝」と書いてありました。となりの「紀和町」の布引の滝は有名でしたが、紀宝町の布引の滝はそのころはまだ無名であったため、まったく案内がありませんでしたが、民家を訪ね、場所を聞き、谷を上っていきました。なんとなく何かに誘われるように進みました。途中二度ほど道がわからなくなり引き換えそうとしましたが、小さな立て札の「布引→」という文字に励まされ進みました。途中二つほど滝が現れました。「きっとこれが布引の滝だ」と思って簡単に写真を撮り、さて、引き返そうか・・と思ったのですが、川の反対側に小さな立て札「←布引・・」がまた現れたのです。まだ、その頃若かった私は、とりあえず先に進んでみることにしました。

しばらく進んで、道がなくなりました。やっぱり先ほどのが「布引」なのかなぁ・・と思い、引き返そうと、ふと振り返ると、先ほどは気づかなかった、川の反対側に渡る小さな橋が現れました。「あれ・・どこかで見た風景だな・・」と思って、その橋を渡り、夢中になって藪や大きな岩やいろいろな障害物を乗り越えて進みました。だいぶ進み、川の流れが速く、まわりの岩が大きくなってきました。突然目の前に2メートル強の大きな岩が現れたときには、「やっぱり引き返そう」「やっぱり先ほどの滝が布引かも・・」と思いました。そして何気なく水の落ちてくる岩の隙間から空を見上げてみると・・・「さぁーーーっ・・」という音とともにあの夢で見た滝そのままの「蜘蛛の糸をたらしたような滝」が目の前に現れたのでした。

そのときは本当に目を疑いました。そうなんです正夢というか、まったく同じ滝だったのです。規模といい形という出現のしかたといい・・・とにかく感動で震えてしまいました。もし、今まで見た他の滝と同じような形であればびっくりしませんでしたが、本当にいままで見たことも無い滝であったし、夢で見た滝とまったく同じだったということで、とくにかく驚きました。あまりのショックのため、写真もまともに撮れず、何か急に怖くなりそのまま引き返しました。

家に帰ってから、回りの人に話しても誰も信じてくれませんでした。そしていろんな文献を調べましたが、その紀宝町の布引の滝の写真はどこにもありませんでした。でも、私自身、誰も信じてくれなくてもいい・・とにかくすごい体験をしたんだということで、しばらく自分の中でしまっておきました。

写真は、現像したけれども全体が写っている写真はすべて失敗でした。でも、なんとなく滝の形は分かりましたが、人に見せるようなものではなかったので、またいつか行ってやると決心しました。次は4月、強引に休みを取り、朝3時に家を出てその滝に向かいました。そのときの写真がこれです。天候にも恵まれ、水量もちょうどいい感じで、それまで見た滝の中の「私の中での最高の滝」が出現したのでした。春なのに秋の空のような雲も現れ不思議な気持ちでたくさんシャッターを切りました。おかげで、なんとかキレイに写っていて、しばらくは満足でした。でも、また欲が出るというか、別の光景も見てみたいと思うようになりました。

そして、また夏にも出かけました。こんどは台風の後でした・・。きっと水が多くてまた違った写真になるぞ・・と思って行ったのですが・・そうしたら、今度は滝つぼに動物の死骸がありました。腐っていました。不思議です。4月には何も無かったし、あれから3月も経っていないのにこんなに腐るものなのか・・。よくわかりませんが、なんとなく、その滝から「もう来るな」といわれているような気がしました。それ以来、この滝は私の中で封印されています。本当に不思議な不思議な体験をした滝でした。あれから7年以上経ちました・・そろそろ封印を解いてもいいころかもしれないです。さて、今度行ったら何が迎えてくれるのか・・・。楽しみです。